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Oracle® Database管理者リファレンス
11gリリース2 (11.2) for Linux and UNIX-Based Operating Systems
B56317-12
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C HP-UXシステムでのOracle Databaseの管理

この付録では、HP-UXシステムでOracle Databaseを管理する方法について説明します。内容は次のとおりです。

C.1 Oracleインスタンス用のHP-UX共有メモリー・セグメント

Oracle Databaseは、インスタンスの起動時に、Oracleシステム・グローバル領域(SGA)の作成用に割り当てられた共有メモリーをHP-UX shmmaxカーネル・パラメータの値で除算して、メモリー・セグメントを作成します。たとえば、1つのOracleインスタンスに割り当てられた共有メモリーが64GBで、shmmaxパラメータの値が1GBの場合、Oracle Databaseはそのインスタンスに対して64個の共有メモリー・セグメントを作成します。

1つのOracleインスタンスに対して複数の共有メモリー・セグメントが作成されると、パフォーマンスが低下する可能性があります。これは、Oracle Databaseでインスタンスが作成されるときに、各共有メモリー・セグメントが一意の保護キーを受け取るためです。使用できる保護キーの数は、次の表に示すように、システム・アーキテクチャによって異なります。

アーキテクチャ 保護キーの数
PA-RISC 6
Itanium 14

Oracleインスタンスが作成する共有メモリー・セグメントが保護キーの数より多い場合、HP-UXオペレーティング・システムは、保護キー・フォルトを表示します。

shmmaxパラメータ値は、システムで使用できる物理メモリーの量に設定することをお薦めします。この設定により、1つのOracleインスタンスの共有メモリー全体が1つの共有メモリー・セグメントに割り当てられ、インスタンスに必要な保護キーが1つのみになります。

システムのアクティブな共有メモリー・セグメントのリストを表示するには、次のコマンドを実行します。

$ ipcs -m

Oracle Databaseがインスタンスに対して保護キーの数よりも多いセグメントを作成する場合は、shmmaxカーネル・パラメータの値を大きくします。


関連項目:

カーネル・パラメータの推奨最小値の詳細は、『Oracle Databaseインストレーション・ガイド』を参照してください

C.2 HP-UX SCHED_NOAGEスケジュール・ポリシー

HP-UXでは、ほとんどのプロセスがタイムシェアリング・スケジュール・ポリシーを使用します。タイムシェアリングが適用されると、重要な操作(ラッチの保持など)が実行されるときにOracleプロセスがスケジュールから除外されるため、パフォーマンスが低下する場合があります。HP-UXには、特にこの問題に対処した修正済のスケジュール・ポリシーであるSCHED_NOAGEが用意されています。通常のタイムシェアリング・ポリシーとは異なり、SCHED_NOAGEを使用してスケジュールが設定されたプロセスは、優先順位が上下したり、優先使用されることがありません。

この機能は、オンライン・トランザクション処理環境に適しています。これは、オンライン・トランザクション処理環境では重要なリソースをめぐって競合が発生することがあるためです。Oracle DatabaseでSCHED_NOAGEポリシーを使用すると、オンライン・トランザクション処理環境では、パフォーマンスが10%以上も向上する可能性があります。

SCHED_NOAGEポリシーを意思決定支援環境で使用しても、同程度のパフォーマンス効果は得られません。これは、リソースの競合がほとんど発生しないためです。アプリケーションおよびサーバーの環境はそれぞれ異なるため、使用している環境に対してSCHED_NOAGEポリシーが有効であることをテストして検証する必要があります。SCHED_NOAGEを使用する場合、Oracleプロセスに最も高い優先順位を割り当てる際には注意が必要です。SCHED_NOAGEの最も高い優先順位をOracleプロセスに割り当てると、システムのCPUリソースを使い果し、他のユーザー・プロセスのレスポンスが停止する可能性があります。

C.2.1 Oracle Database用のSCHED_NOAGEの有効化

Oracle DatabaseでSCHED_NOAGEスケジュール・ポリシーを使用できるようにするには、OSDBAグループ(通常はdbaグループ)に、スケジュール・ポリシーの変更およびOracleプロセスの優先順位レベルの設定を行うためのRTSCHEDおよびRTPRIO権限が必要です。dbaグループにこれらの権限を付与するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーでログインします。

  2. テキスト・エディタを使用して/etc/privgroupファイルを開くか、必要な場合は作成します。

  3. OSDBAグループの名前で始まる次の行を追加または編集し、システムが再起動するたびにこのグループに付与するRTPRIOおよびRTSCHED権限を指定します。

    dba RTPRIO RTSCHED
    
  4. ファイルを保存してテキスト・エディタを終了します。

  5. 次のコマンドを入力し、OSDBAグループに権限を付与します。

    # /usr/sbin/setprivgrp -f /etc/privgroup
    
  6. 次のコマンドを入力し、権限が正しく設定されていることを確認します。

    # /usr/bin/getprivgrp dba
    

HPUX_SCHED_NOAGEは、静的な初期化パラメータであるため、新しい設定を有効にするには、インスタンスを再起動する必要があります。HPUX_SCHED_NOAGE初期化パラメータを各インスタンスのパラメータ・ファイルに追加し、このパラメータにプロセスの優先順位レベルを整数値で設定します。サポートされる値の範囲は178から255です。値が小さくなるほど優先順位が高くなります。すべてのOracleプロセスについて、HPUX_SCHED_NOAGE初期化パラメータのデフォルト値は178です。LMSプロセスでは、_os_sched_high_priority初期化パラメータを設定すると、この値を変更できます。_os_sched_high_priorityパラメータが31から2の間の場合、LMSプロセスはSCHED_RRで設定された優先順位で実行されます。パラメータの値が178から255の間の場合、プロセスはSCHED_NOAGEで設定された値で実行されます。ただし、LMSは、HPUX_SCHED_NOAGEの値より低い優先順位レベルでは実行されません。

HPUX_SCHED_NOAGEパラメータの設定が範囲外である場合、Oracle Databaseは自動的にそのパラメータを許容値に設定し、新しい値が設定されたSCHED_NOAGEポリシーを使用して処理を続行します。また、新しい設定に関するメッセージをalert_sid.logファイルに生成します。ユーザーまたは自動再調整によってOracleプロセスに最も高い優先順位が割り当てられた場合は常に、Oracle Databaseは、システムのCPUリソースが使い果される可能性があることを警告するメッセージをalert_sid.logファイルに生成します。このパラメータには、Oracleプロセスに必要な優先順位レベルを割り当てておくことをお薦めします。


関連項目:

優先順位ポリシーと優先順位の範囲の詳細は、HP-UXのドキュメントと、rtsched(1)およびrtsched(2)のmanページを参照してください。

C.3 軽量タイマーの実装

Oracle Database 11gでは、動的初期化パラメータSTATISTICS_LEVELTYPICAL(デフォルト)またはALLに設定されている場合、いつでもランタイム統計を収集できます。このパラメータの設定は、TIMED_STATISTICS初期化パラメータを暗黙的にtrueに設定します。HP-UXシステムのOracle Databaseでは、gethrtime()システム・ライブラリ・コールを使用して、統計の収集中に経過時間を計算します。この軽量システム・ライブラリ・コールを使用すると、Oracleインスタンスを実行しながら、パフォーマンスに影響を与えることなく、いつでもランタイム統計を収集できます。

TIMED_STATISTICS初期化パラメータが明示的にtrueに設定されているときに、gethrtime()システム・ライブラリ・コールを使用すると、使用していない場合に比べてOracleのパフォーマンスを最大10%向上させることができます。また、ランタイム統計の収集にgethrtime()システム・ライブラリ・コールを使用しても、Oracle Databaseのオンライン・トランザクション処理のパフォーマンスが低下することはありません。

C.4 非同期入出力

非同期入出力擬似ドライバをHP-UX上で使用すると、Oracle DatabaseがRAWディスク・パーティションに対する入出力を非同期方式で実行できるようになり、入出力のオーバーヘッドが軽減してスループットが向上します。非同期入出力擬似ドライバは、HP-UXのサーバーとワークステーションの両方で使用できます。

この項では、次の項目について説明します。

C.4.1 MLOCK権限

Oracle Databaseで非同期入出力操作を処理できるようにするには、OSDBAグループ(dba)にMLOCK権限が必要です。dbaグループにMLOCK権限を付与するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーでログインします。

  2. テキスト・エディタを使用して/etc/privgroupファイルを開くか、必要な場合は作成します。

  3. OSDBAグループの名前で始まる次の行を追加または編集し、MLOCK権限を指定します。


    注意:

    このファイルでは、特定のグループに対する権限の指定に1行のみを使用する必要があります。このファイルにdbaグループに関する行が含まれている場合は、その行にMLOCK権限を追加してください。

    dba RTPRIO RTSCHED MLOCK
    
  4. ファイルを保存してテキスト・エディタを終了します。

  5. 次のコマンドを入力し、OSDBAグループに権限を付与します。

    # /usr/sbin/setprivgrp -f /etc/privgroup
    
  6. 次のコマンドを入力し、権限が正しく設定されていることを確認します。

    # /usr/bin/getprivgrp dba
    

C.4.2 非同期入出力の実装

HP-UXで非同期入出力を使用するには、データベース・ファイルの記憶域オプションとしてRAWパーティションを使用する自動ストレージ管理ディスク・グループを使用する必要があります。


関連項目:

HP-UXシステムでの自動ストレージ管理とRAW論理ボリュームの構成の詳細は、『Oracle Databaseインストレーション・ガイド』を参照してください

いずれかの記憶域オプションで非同期入出力を実装する前に、System Administrator Managementユーティリティを使用して、HP-UXカーネルに非同期ディスク・ドライバを構成する必要があります。


注意:

Oracle Database 11gリリース1では、ファイル・システムに対してDISK_ASYNCH_IOパラメータをFALSEに設定する必要がありませんでした。しかし、Oracle Database 11gリリース2からは、データベース・ファイルの格納にファイル・システムを使用する場合、初期化パラメータDISK_ASYNCH_IOFALSEに設定する必要があります。デフォルトでは、DISK_ASYNCH_IOの値はTRUEです。

DISK_ASYNCH_IOパラメータをTRUEに設定する必要があるのは、データベース・ファイルの格納にRAWパーティションを使用する場合のみです。


System Administrator Managementユーティリティを使用して非同期ディスク・ドライバを追加し、カーネルを構成するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーで次のコマンドを実行します。

    # sam
    
  2. 「Kernel Configuration」領域を選択します。

  3. 「Drivers」領域を選択します。

  4. 非同期ディスク・ドライバ(asyncdsk)を選択します。

  5. 「Actions」「Add Driver to Kernel」の順に選択します。

  6. 「List」「Configurable Parameters」の順に選択します。

  7. MAX_ASYNC_PORTSパラメータを選択します。

  8. 「Action」「Modify Configurable Parameter」の順に選択します。

  9. 次のガイドラインに従ってパラメータに新しい値を指定し、「OK」をクリックします。

    MAX_ASYNC_PORTSパラメータは、構成可能なHP-UXカーネル・パラメータで、/dev/asyncファイルを同時に開くことができる最大プロセス数を制御します。

    最大数のプロセスが/dev/asyncファイルを開いた後で別のプロセスがそのファイルを開こうとすると、エラー・メッセージが表示されます。多数のシャドウ・プロセスやパラレル問合せスレーブが非同期入出力を実行しているシステムでは、このエラーが発生するとパフォーマンスが低下することがあります。このエラーは記録されません。このエラーを回避するには、/dev/asyncファイルにアクセスする可能性がある最大プロセス数を予測し、MAX_ASYNC_PORTSパラメータにその値を設定します。

  10. 「Actions」「Process a New Kernel」の順に選択します。

  11. 次のいずれかのオプションを選択し、「OK」をクリックします。

    • Move Kernel Into Place and Shutdown System/Reboot Now

    • Do Not Move Kernel Into Place: Do Not Shutdown/Reboot Now

    2番目のオプションを選択すると、新しいカーネルvmunix_testとその作成に使用されるsystem.SAM構成ファイルの両方が、/stand/buildディレクトリに作成されます。

HP-UX非同期デバイス・ドライバを使用して非同期入出力操作をできるようにするには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーでログインします。

  2. /dev/asyncが存在しない場合は、次のコマンドを使用して作成します。

    # /sbin/mknod /dev/async c 101 0x104
    

    デフォルトでは、マイナー番号は0(ゼロ)に設定されます次の表に、デバイス・ファイルの作成に使用できる様々な8ビットのマイナー番号を示します。

    マイナー番号 説明
    0x0 これは、/dev/asyncのHP-UXのデフォルト値です。
    0x4 永久的に再試行するかわりに、ディスク・デバイス・タイムアウトが完了してエラー・コードが表示されるようになります。アプリケーション・レベルのディスク・ミラー化には、障害が発生したディスク・デバイスの修復をアプリケーションが永久的に待機する状況を回避するために、この設定が必要です。Oracle RDBMSユーザーは、自動ストレージ管理のミラーリング/レプリケーション(内部冗長性)を使用する場合、この機能を有効にする必要があります。SGAはメモリー内でロックされます。
    0x100 asyncdsk_open(2)のコール時の、非同期ドライバによるメモリー・ページのオンデマンド・ロックが可能になります。オーバーヘッドの低いルーチンが、I/O操作の際にページをメモリー内にロックするために使用されます。

    オンデマンド・ロックは、Oracleの自動メモリー管理機能(メモリー使用量の制御にinit.oraファイルのMEMORY_TARGETを使用)を使用する場合、非常に重要です。動的nParまたは動的vPar機能を利用するRDBMSデプロイメントでは、オンデマンド・ロックも構成する必要があります。

    従来のRDBMSデプロイメントでは、オンデマンド・ロックの明らかな効果を踏まえてその使用を検討できます。一般に、SGA全体がメモリー内に即時にロックされないため、RDBMSの起動が速くなります。ただし、メモリー・ページがI/Oリクエストごとに動的にロック/ロック解除されるため、オンデマンド・ロックによってランタイム・パフォーマンスがわずかに低下するインスタンスもあります。

    0x104 Grid InfrastructureインストールのASM I/O操作のタイムアウトが可能になります。これは、0x100および0x4の組合せです。どちらの機能も有効になります。

  3. 次のコマンドを入力し、メジャー番号が101の/dev/asyncデバイス・ファイルが存在することを確認します。

    # ls -l /dev/async
    

    このコマンドの出力は、次のようになります。

    crw------- 1 oracle   dba     101 0x000000 Oct 28 10:32  /dev/async
    
  4. 必要に応じて、このデバイス・ファイルに対し、Oracleソフトウェア所有者およびOSDBAグループとの整合性のあるオペレーティング・システム所有者とアクセス権を指定します。

    Oracleソフトウェア所有者がoracleで、OSDBAグループがdbaの場合は、次のコマンドを実行します。

    # /usr/bin/chown oracle:dba /dev/async
    # /usr/bin/chmod 660 /dev/async
    

C.4.3 非同期入出力の検証

非同期入出力を検証するには、最初に、HP-UX非同期ドライバがOracle Database用に構成されているかを検証します。次に、Oracle DatabaseがHP-UXデバイス・ドライバを介して非同期入出力を実行しているかを検証します。

C.4.3.1 HP-UX非同期ドライバがOracle Database用に構成されているかの検証

HP-UX非同期ドライバがOracle Database用に正しく構成されているかを検証するには、次の手順を実行します。

  1. パラレル問合せスレーブ・プロセスの数が少ないOracle Databaseを起動します。

  2. 次のコマンドを入力して、GlancePlus/UXユーティリティを起動します。

    $ gpm
    
  3. メイン・ウィンドウで、「Reports」「Process List」の順にクリックします。

  4. 「Process List」ウィンドウで、パラレル問合せスレーブ・プロセスを1つ選択し、「Reports」「Process Open Files」の順に選択します。

    パラレル問合せスレーブ・プロセスによって現在開かれているファイルのリストが表示されます。

  5. オープン・ファイルのリストで、/dev/asyncファイルまたは101 0x104000モードをチェックします。

    いずれかがリストに含まれている場合は、パラレル問合せスレーブ・プロセスによって/dev/asyncファイルが開かれており、HP-UX非同期デバイス・ドライバは、Oracleプロセスが非同期入出力を実行できるように正しく構成されています。/dev/asyncファイルのファイル記述子番号をメモしておきます。

C.4.3.2 Oracle Databaseが非同期入出力を使用しているかの検証

Oracle DatabaseがHP-UX非同期デバイス・ドライバを介して非同期入出力を使用しているかを検証するには、次の手順を実行します。

  1. HP-UX tuscユーティリティを、前述の手順のGlancePlusで選択したものと同じOracleパラレル問合せスレーブにアタッチします。

  2. 使用している環境で入出力バウンド問合せを実行します。

  3. tusc出力でread/writeコールのパターンをチェックします。

    そのためには、たとえば、次のコマンドを入力します。pidは、非同期入出力を処理する予定のパラレル問合せスレーブのプロセスIDです。

    $ tusc -p pid > tusc.output
    
  4. 問合せの実行後、[Ctrl]+[C]を押してプロセスから切断し、tusc.outputファイルを開きます。

    次に、tusc.outputファイルのサンプルを示します。

    ( Attached to process 2052: "ora_p000_tpch" [ 64-bit ])
    ................... 
    ........................ 
    [2052] read(9, "80\0\001\013  \b\0\0\0\0\0\0\0\0".., 388) .. = 28 
    [2052] write(9, "\0\0\00e\0\0\0\080\0\001\013Ð \0".., 48) .. = 48 
    [2052] read(9, "80\0\001\013¢ 18\0\0\0\0\0\0\0\0".., 388) .. = 28 
    [2052] write(9, "\0\0\00e\0\0\0\080\0\001\01bd4\0".., 48) .. = 48 
    
    
    

    DISK_ASYNCH_IO初期化パラメータが明示的にfalseに設定されていない場合(デフォルトのtrueに設定されている場合)、tusc.outputファイルには、同じファイル記述子(この例では9)の非同期read/writeコールのパターンが連続して表示されます。

    tusc.outputファイルのファイル記述子番号をGlancePlusの/dev/asyncファイルで使用されている番号にマップします。これらの番号は、特定のパラレル問合せスレーブ・プロセスについて一致している必要があります。これにより、HP-UX非同期ドライブを介した入出力が非同期であることが検証されます。同期入出力の場合またはDISK_ASYNCH_IO初期化パラメータが明示的にFALSEに設定されている場合、前述の非同期read/writeパターンは表示されません。かわりに、lseekまたはpread/pwriteのコールが表示されます。また、1つのファイル記述子のみでなく、多数の異なるファイル記述子(read/writeの最初の引数)が表示されます。

C.4.4 SGAの非同期フラグ

HP-UX上のOracle Databaseでは、HP-UX非同期ドライバが提供する非ブロック・ポーリング機能を使用して、入出力操作のステータスがチェックされます。このポーリングは、送信された入出力操作のステータスに基づいて非同期ドライバが更新するフラグのチェックにより実行されます。HP-UXでは、このフラグが共有メモリーに読み込まれている必要があります。

Oracle Databaseでは、非同期フラグを各OracleプロセスのSGA内に構成します。HP-UX上のOracle Databaseは、真の非同期入出力メカニズムを備え、以前に発行された入出力操作の一部が完了していなくても、入出力リクエストを発行できます。これにより、パフォーマンスが向上し、パラレル入出力プロセスの優れたスケーラビリティが保証されます。

リリース8.1.7より前のOracle Databaseのリリースでは、入出力操作は、HP-UX非同期ドライバを使用して共有メモリーからのみ実行できました。Oracle Database 11gでは、新しいHP-UX非同期ドライバを使用して共有メモリーとプロセス専用領域の両方から入出力操作を実行できます。ただし、非同期ドライバを介した入出力操作は、実際は非同期ではありません。これは、Oracle Databaseでは、非同期ドライバに送信された入出力操作のステータスのチェックに、ブロック待機を実行する必要があるためです。その結果、データベース・ライター・プロセスなどの一部のOracleプロセスでは、実質的には同期入出力が処理されています。

C.5 大規模メモリーの割当てとOracle Databaseのチューニング

Oracle Database 11gで稼働するアプリケーションは、以前のリリースで稼働するアプリケーションと比べて非常に大きいメモリーを使用できます。これは、HP-UXシステム上のOracle Database 11gで、仮想メモリー・データ・ページのデフォルト設定がD(4KB)からL(4GB)に変更されたためです。

この項では、次の項目について説明します。

C.5.1 デフォルトの大規模仮想メモリー・ページ・サイズ

デフォルトでは、Oracle Databaseは、プロセス専用メモリーの割当てに、HP-UXで使用できる最大の仮想メモリー・ページ・サイズ設定を使用します。これは、値L(最大)で定義されます。この値は、Oracle実行可能ファイルのリンク時に、LARGE_PAGE_FLAGSオプションの1つとして設定されます。

仮想メモリー・ページ・サイズがLに設定されていると、HP-UXは、使用可能なプロセス専用メモリーを、1GB制限または割り当てられたメモリー量の合計に達するまで、1MB、4MB、16MBなどのサイズのページに割り当てます。Oracle PGAに十分なメモリーが割り当てられていて、大きなデータ・ページ・サイズ単位でのメモリー割当てが可能な場合、オペレーティング・システムは一度に最大ページ・サイズを割り当てます。たとえば、Oracle PGAに48MBを割り当てている場合、システムでは、16MBを3ページ設定するか、より小さい倍数の単位サイズのページを組み合せることができます。たとえば、1MBを4ページ、4MBを3ページ、16MBを2ページにするなどです。PGAに64MBを割り当てた場合、データ・ページ単位サイズと使用可能なメモリーが一致するため、1ページ(64MB)がオペレーティング・システムによって割り当てられます。

一般に、大規模メモリー・ページによってアプリケーションのパフォーマンスは向上します。これは、オペレーティング・システムが処理する必要のある仮想メモリー変換時のエラー数が減り、より多くのCPUリソースをアプリケーションに解放できるためです。また、プロセス専用メモリーの割当てに必要なデータ・ページ数の合計も減ります。これにより、プロセッサ・レベルでのTranslation Lookaside Bufferミスの可能性が減ります。

ただし、アプリケーションにメモリーの制約があり、非常に多くのプロセスを実行する傾向がある場合は、この大幅なページ・サイズの増加によってプロセスは大規模なメモリーの割当てを指示するため、メモリー不足エラー・メッセージが発生する可能性があります。このエラーが発生する場合は、ページ・サイズの値を小さくして、D(デフォルト)サイズの4KBからL(最大)サイズの4GBまでの間に設定する必要があります。

最小ページ・サイズ設定(4KB)を使用すると、最大ページ・サイズ設定を使用した場合よりもCPU使用率が20%以上高くなります。最大設定のLを使用すると、4MBの設定を使用した場合よりもメモリー使用率が50%以上高くなります。システムにメモリー制約がある場合は、使用できるメモリー・リソースの制約内で、ページ・サイズを特定のアプリケーションの要件と一致するように設定することをお薦めします。

たとえば、設定値Lでは問題が発生するアプリケーションで、4MBの仮想メモリー・ページ設定を使用すると、適切なパフォーマンスが得られる場合があります。

C.5.2 チューニングに関する推奨事項

永続的な専用SQL領域および大規模仮想メモリー・ページ・サイズへのメモリー割当ての増加に対応してチューニングを行うには、必要に応じて、Oracle Databaseの仮想メモリー・データ・ページ・サイズを減らすことをお薦めします。次のコマンドを使用して、ページ・サイズ設定を変更します。

# /usr/bin/chatr +pd newsize $ORACLE_HOME/bin/oracle

この例のnewsizeは、仮想メモリー・ページ・サイズの新しい値を表します。

chatrコマンドを次のように使用して、新しい設定を表示します。

# /usr/bin/chatr $ORACLE_HOME/bin/oracle

C.5.3 チューニング可能なベース・ページ・サイズ

ベース・ページ・サイズを大きくすると、メモリーを効率的に管理できます。base_pagesizeのデフォルト値は4KBです。HP-UX 11.31に導入された新機能により、kctune(1M)を起動してチューニング可能なbase_pagesizeを変更した後にコンピュータを再起動すると、ベース・ページのサイズを調整できます。


注意:

ベース・ページのサイズ機能は、HP-UX PA RISCオペレーティング・システムではサポートされていません。

C.6 CPU_COUNT初期化パラメータおよびHP-UX動的プロセッサ再構成

HP-UX 11iでは、プロセッサ・セットの動的ランタイム再構成と、有効なユーザーによるプロセッサ・セット間のワークロードの動的再割当てをサポートしています。

HP-UX Virtual Partitionsを使用すると、ユーザーは、各自のシステムを複数の論理パーティションで構成し、各パーティションに独自のプロセッサ、メモリーおよび入出力リソースのセットを割り当てて、HP-UXオペレーティング・システムの個別のインスタンスを実行できます。vParsに組み込まれているHP-UXプロセッサ・セットを使用すると、仮想パーティションを再起動せずに、仮想パーティション間でプロセッサを動的に移行できます。これにより、アプリケーション間でリソースのパーティション化を効率的に行うことができるため、HP-UXサーバー上で稼働する各アプリケーションに必要なリソース割当てに対する干渉および保証を最小限に抑えることができます。


関連項目:

動的リソース・プロビジョニングの詳細は、『Oracle Database概要』のシステムとデータベースの変更に関する項を参照してください

C.7 ネットワーク情報サービスの外部ネーミングのサポート

HP-UXでは、ネットワーク情報サービスの外部ネーミング・アダプタがサポートされています。ネットワーク情報サービスの外部ネーミングを構成および使用する方法の詳細は、『Oracle Database Net Services管理者ガイド』の外部ネーミング・メソッドの構成に関する項を参照してください。

C.8 拡張ホスト名および拡張ノード名のアクティブ化と設定

デフォルトでは、システムのノード名とホスト名の長さの制限は8バイトと64バイトです。システム管理者は、システムを構成してどちらの制限も255バイトに拡張できます。

長い名前を設定できるようにするには、動的カーネル調整可能パラメータexpanded_node_host_namesを有効にする必要があります。

カーネル・パラメータを有効にするには、次のコマンドを実行します。

kctune expanded_node_host_names=1

カーネル・パラメータを無効にするには、次のコマンドを実行します。

kctune expanded_node_host_names=0