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Oracle® Data Guard概要および管理
11gリリース2 (11.2)
B56302-06
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E Recovery Managerを使用したスタンバイ・データベースの作成

この付録では、Oracle Recovery Managerを使用してスタンバイ・データベースを作成する方法を説明します。この付録は、次の項目で構成されています。

E.1 前提条件

この付録は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』のデータベース・レプリケーションに関する章を読んでいることが前提になっています。DUPLICATEコマンドを使用してRMANでスタンバイ・データベースを作成するので、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』DUPLICATEコマンド・エントリについて理解している必要があります。

この章で説明するRecovery Managerでの作成手順を実行する前に第3章「フィジカル・スタンバイ・データベースの作成」および第4章「ロジカル・スタンバイ・データベースの作成」のスタンバイ・データベースの作成方法を理解しておいてください。

E.2 Recovery Managerを使用したスタンバイ・データベースの作成の概要

この項では、Recovery Managerを使用してスタンバイ・データベースを作成する目的および基本概念について説明します。

E.2.1 Recovery Managerを使用したスタンバイ・データベースの作成の目的

プライマリ・データベースのバックアップからスタンバイ・データベースを作成するには、手動で行うか、Recovery ManagerのDUPLICATEコマンドを使用します。Recovery Managerを使用してスタンバイ・データベースを作成すると、手動による作成と比べて次のメリットがあります。

  • プライマリ・データベースで現在使用しているファイルをコピーしてスタンバイ・データベースを作成できます。バックアップは必要ありません。

  • プライマリ・データベースのバックアップをスタンバイ・サイトにリストアしてスタンバイ・データベースを作成できます。したがって、スタンバイ・データベースの作成中にプライマリ・データベースが影響を受けることはありません。

  • Oracle Managed Files(OMF)などのファイルやディレクトリ構造の名前の変更が自動化されます。

  • アーカイブREDOログ・ファイルをバックアップからリストアされ、スタンバイ・データベースとプライマリ・データベースが同期化されるようにメディア・リカバリが実行されます。

E.2.2 Recovery Managerを使用したスタンバイ・データベースの作成の基本概念

Recovery Managerを使用してスタンバイ・データベースを作成する手順は、複製データベースの作成とほぼ同じです。スタンバイ・データベース固有の問題に対処するために、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』で説明されている複製手順を変更する必要があります。

DUPLICATEコマンドを使用してスタンバイ・データベースを作成するには、ターゲットとしてプライマリ・データベースに接続し、FOR STANDBYオプションを指定する必要があります。スタンバイ・データベースに接続してスタンバイ・データベースを追加作成することはできません。Recovery Managerは、制御ファイルをリストアおよびマウントして、スタンバイ・データベースを作成します。Recovery Managerではプライマリ・データベースの制御ファイルの既存のバックアップを使用できるので、スタンバイ・データベース専用に制御ファイルのバックアップを作成する必要はありません。

FOR STANDBY OPTION指定せずにDUPLICATEで作成した複製データベースと異なり、スタンバイ・データベースには新しいDBIDが設定されません。そのため、スタンバイ・データベースをリカバリ・カタログに登録しないでください。

E.2.2.1 アクティブ・データベース複製とバックアップベース複製

アクティブ複製とバックアップベース複製のいずれかを選択する必要があります。FROM ACTIVE DATABASEを指定すると、Recovery Managerはデータファイルをプライマリ・データベースからスタンバイ・データベースに直接コピーします。プライマリ・データベースをマウントまたはオープンする必要があります。

FROM ACTIVE DATABASEを指定しないと、Recovery Managerはバックアップベース複製を実行します。プライマリ・データファイルのバックアップがスタンバイ・データベースにリストアされます。スタンバイ・データベースの作成およびリカバリに必要なバックアップおよびアーカイブREDOログ・ファイルはすべて、スタンバイ・ホストのサーバー・セッションでアクセスできる必要があります。SET UNTILコマンドを実行しないかぎり、最新のデータファイルがリストアされます。

E.2.2.2 Recovery Manager環境におけるDB_UNIQUE_NAMEの値

FOR STANDBYオプションを指定せずにDUPLICATEコマンドを使用して作成された複製データベースと異なり、スタンバイ・データベースには新しいDBIDが設定されません。Data Guard環境でRecovery Managerを使用する場合、常にリカバリ・カタログに接続する必要があります。リカバリ・カタログには、環境内のすべてのプライマリ・データベースとスタンバイ・データベースに関するメタデータを格納できます。スタンバイ・データベースは、リカバリ・カタログに明示的に登録しないでください。

Data Guard環境内のデータベースは、初期化パラメータ・ファイルのDB_UNIQUE_NAMEパラメータによって一意に識別する必要があります。DB_UNIQUE_NAMEは、Recovery ManagerがData Guard環境で正しく機能するために、同じDBIDを持つすべてのデータベース間で一意である必要があります。


関連項目:

Data Guard環境でのRMAN操作の概要は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

E.2.2.3 スタンバイ・データベースのリカバリ

デフォルトで、Recovery Managerはスタンバイ・データベースの作成後、リカバリを実行しません。Recovery Managerはスタンバイ・データベースをマウントしたままにしますが、スタンバイ・データベースを手動または管理リカバリ・モードには設定しません。Recovery Managerは接続を切断し、スタンバイ・データベースのメディア・リカバリを実行しません。

Recovery Managerでスタンバイ・データベースの作成後にリカバリを行う場合、リカバリに対してスタンバイ制御ファイルが使用可能である必要があります。次の条件を満たしている必要があります。

  • スタンバイ・データベースのリカバリ終了時刻は、スタンバイ制御ファイルのチェックポイントSCN以上である必要があります。

  • スタンバイ制御ファイルのチェックポイントSCNが含まれているアーカイブREDOログ・ファイルは、リカバリ用にスタンバイ・サイトから使用可能である必要があります。

これらの条件を満たしていることを確認する方法として、プライマリ・データベースに制御ファイルをバックアップ後、ALTER SYSTEM ARCHIVE LOG CURRENT文を実行します。この文は、プライマリ・データベースのオンラインREDOログ・ファイルをアーカイブします。その後、最新のアーカイブREDO・ログ・ファイルをRecovery Managerでバックアップするか、またはアーカイブREDOログ・ファイルをスタンバイ・サイトに移動します。

DUPLICATEコマンドのDORECOVERオプションを使用して、Recovery Managerでスタンバイ・データベースをリカバリするように指定します。Recovery Managerは、スタンバイ・データベース・ファイルの作成後に次の手順を実行します。

  1. Recovery Managerはメディア・リカバリを開始します。アーカイブREDOログ・ファイルを必要とするリカバリで、そのログ・ファイルがディスクにない場合、Recovery Managerはバックアップのリストアを試みます。

  2. Recovery Managerは、指定された時間、システム変更番号(SCN)またはログ・ファイル順序番号にスタンバイ・データベースをリカバリします。そのいずれも指定されていない場合は、最新の生成済アーカイブREDOログ・ファイルにリカバリします。

  3. Recovery Managerは、メディア・リカバリの完了後、スタンバイ・データベースをマウントしたままにしますが、スタンバイ・データベースを手動または管理リカバリ・モードには設定しません

E.2.2.4 スタンバイ・データベースREDOログ・ファイル

Recovery Managerは、スタンバイ・データベースでスタンバイREDOログ・ファイルを自動的に作成します。ログ・ファイルは作成後、スタンバイ・データベースによってログ・ファイルの通常のルールに従って管理およびアーカイブされます。

バックアップベース複製を使用した場合、スタンバイ・データベースでスタンバイREDOログ・ファイルに名前を付けるときの唯一のオプションは、スタンバイ制御ファイルで指定されるログ・ファイルのファイル名です。スタンバイでのログ・ファイル名をプライマリのファイル名と異なる名前にする必要がある場合は、スタンバイ初期化パラメータ・ファイルでLOG_FILE_NAME_CONVERTを設定して、スタンバイREDOログのファイル名を指定する方法を選択できます。

スタンバイ・データベースでスタンバイREDOログ・ファイルのファイル名を指定する際、次の制限事項に注意してください。

  • プライマリ・データベースおよびスタンバイ・データベースでログ・ファイルに異なるネーミング規則を使用する場合、スタンバイREDOログ・ファイルにはLOG_FILE_NAME_CONVERTパラメータを使用して名前を付ける必要があります。

  • スタンバイREDOログ・ファイルの名前の変更には、SET NEWNAMEまたはCONFIGURE AUXNAMEコマンドを使用できません。

  • スタンバイREDOログ・ファイルのファイル名の指定には、DUPLICATEコマンドのLOGFILE句を使用できません。

  • スタンバイ・データベースでのスタンバイREDOログ・ファイル名をプライマリREDOログ・ファイル名と同じ名前にする場合、DUPLICATEコマンドのNOFILENAMECHECK句を指定する必要があります。指定しない場合、スタンバイ・データベースが異なるホスト上で作成されていても、Recovery Managerによりエラーが発生します。

E.2.2.5 スタンバイ・データベースのパスワード・ファイル

アクティブ・データベース複製を使用すると、スタンバイ・データベースのパスワード・ファイルはターゲット・データベースのパスワード・ファイルの完全コピーである必要があるため、Recovery Managerは常にパスワード・ファイルをスタンバイ・ホストにコピーします。その場合、PASSWORD FILE句は必要ありません。補助インスタンスの既存のパスワード・ファイルはすべて上書きされます。バックアップベース複製では、Data Guardによるログの送信のために、プライマリで使用されているパスワード・ファイルをスタンバイにコピーする必要があります。

E.3 DUPLICATEコマンドを使用したスタンバイ・データベースの作成

スタンバイ・データベースの作成手順は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』で説明している複製手順と基本的に同じです。

E.3.1 アクティブ・データベース複製によるスタンバイ・データベースの作成

プライマリ・データベースのアクティブなファイルからスタンバイ・データベースを作成するには、FOR STANDBYFROM ACTIVE DATABASEの両方を指定します。必要に応じて、DORECOVERオプションを指定し、スタンバイの作成後にデータベースをリカバリします。

この使用例では、スタンバイ・ホストおよびプライマリ・データベース・ホストのディレクトリ構造は同じであることを前提にしています。

スタンバイ・データベースをアクティブなデータベース・ファイルから作成するには、次のようにします。

  1. 補助データベース・インスタンスを準備します。詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

    アクティブ・データベース複製を使用するため、補助インスタンス用にパスワード・ファイルを作成し、Oracle Net接続を確立する必要があります。これは、複製操作中に上書きされるので、一時的なパスワード・ファイルです。

  2. スタンバイ制御ファイル、データファイル、オンラインREDOログおよび一時ファイルの名前の指定方法を決定します。この手順の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

    この使用例では、スタンバイ・データベース・ファイルには、プライマリ・データベース・ファイルと同じ名前を付けます。

  3. Recovery Managerを起動して構成します。詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

  4. DUPLICATEコマンドを実行します。

    次の例に、アクティブ複製でのDUPLICATEの使用方法を示します。この例では、プライマリ・データベース・ファイルがスタンバイ・データベース・ファイルと同じ名前であるため、NOFILENAMECHECKオプションが必要です。SPFILEのSET句は、ログの送信が正常に行われるために必要です。db_unique_nameを設定して、カタログおよびData Guardでこのデータベースがプライマリとは異なるものであると識別できるようにする必要があります。

    DUPLICATE TARGET DATABASE
      FOR STANDBY
      FROM ACTIVE DATABASE
      DORECOVER
      SPFILE
        SET "db_unique_name"="foou" COMMENT ''Is a duplicate''
        SET LOG_ARCHIVE_DEST_2="service=inst3 ASYNC REGISTER
         VALID_FOR=(online_logfile,primary_role)"
        SET FAL_SERVER="inst1" COMMENT "Is primary"
      NOFILENAMECHECK;
    

    Recovery Managerは、サーバー・パラメータ・ファイルをスタンバイ・ホストに自動的にコピーし、そのサーバー・パラメータ・ファイルを使用して補助インスタンスを起動してバックアップ制御ファイルをリストアし、必要なデータベース・ファイルおよびアーカイブREDOログをすべてスタンバイ・ホストにネットワークを介してコピーします。Recovery Managerはスタンバイ・データベースをリカバリしますが、スタンバイ・データベースを手動または管理リカバリ・モードには設定しません。

E.3.2 バックアップベース複製によるスタンバイ・データベースの作成

スタンバイ・データベースをバックアップから作成するには、FOR STANDBYを指定しますが、FROM ACTIVE DATABASEは指定しません。必要に応じて、DORECOVERオプションを指定し、スタンバイの作成後にデータベースをリカバリします。

この使用例では、スタンバイ・ホストおよびプライマリ・データベース・ホストのディレクトリ構造は同じであることを前提にしています。

スタンバイ・データベースをバックアップから作成するには、次のようにします。

  1. 『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』に記載されているように、データベース・バックアップおよびアーカイブREDOログを複製ホスト上の補助インスタンス用に提供します。

  2. 補助データベース・インスタンスを準備します。詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

  3. スタンバイ制御ファイル、データファイル、オンラインREDOログおよび一時ファイルの名前の指定方法を決定します。この手順の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

    この使用例では、スタンバイ・データベース・ファイルには、プライマリ・データベース・ファイルと同じ名前を付けます。

  4. Recovery Managerを起動して構成します。詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

  5. DUPLICATEコマンドを実行します。

    次の例に、バックアップベース複製でのDUPLICATEの使用方法を示します。この例では、プライマリ・データベース・ファイルがスタンバイ・データベース・ファイルと同じ名前であるため、NOFILENAMECHECKオプションが必要です。

    DUPLICATE TARGET DATABASE
      FOR STANDBY
      DORECOVER
      SPFILE
        SET "db_unique_name"="foou" COMMENT ''Is a duplicate''
        SET LOG_ARCHIVE_DEST_2="service=inst3 ASYNC REGISTER
         VALID_FOR=(online_logfile,primary_role)"
        SET FAL_SERVER="inst1" COMMENT "Is primary"
      NOFILENAMECHECK;
    

    Recovery Managerは、サーバー・パラメータ・ファイルをスタンバイ・ホストに自動的にコピーし、そのサーバー・パラメータ・ファイルを使用して補助インスタンスを起動し、必要なデータベース・ファイルおよびアーカイブREDOログをすべてスタンバイ・ホストにリストアします。Recovery Managerはスタンバイ・データベースをリカバリしますが、スタンバイ・データベースを手動または管理リカバリ・モードには設定しません。